ルビィさんとの出会い。
初顔合わせの場所は
お茶の水のドーナツ屋さんにした。
だが、私たちは知らなかった…
当時お茶の水界隈には、二つドーナツ屋さんがあったことを。
それぞれ別個のところで待ち続け約一時間。
まだ携帯も普及していなかった時代。
ルビィさんかもしれないと思い
店にいる人全員に
微笑んでみたりしてその時間を過ごした。
でも誰も声をかけてこない。
それらしい人もいない。。
不安になったその時、
息を切らして
走り込んできた人がいた。
この人だ!
その瞬間、立った私は飲み物をこぼし
二人とも、挨拶する前に大笑いしてしまった。
そういう出会いだった。
彼女が文章を、私がイラストを担当して
厳しい締め切りの数々を
二人でこなしていった。
毎月泣き笑いしながらの打ち合わせは
とっても楽しかった。
仕事を一緒にしながら
ルビィさんの舞踏のことを聞き、
他にもいろんな話をした。
彼女とは何でも話せた。
でも、
結婚するという話は
驚くほど恥ずかしがって、しどろもどろだった。
もっと突っ込んだ艶笑話もしたのに
その奥ゆかしさが、意味がわからんと言うと
「自分が思っている以上に彼がストライクなのよ~~」
と真っ赤な顔で言い、ばしばしたたかれた。
彼女の舞踏の世界も
最初全然わからず
ダンスが終わって打ち上げの度質問した。
たぶん、そういうのが嫌な人もいると思うけれど
ルビィさんはちゃんと答えてくれた。
そうやっていくうちに、自分なりの見方ができた。
アリスと稲垣足穂と、少しダークだけど透明な世界
そんな風に私は感じた。
一つ一つの動作の選択
パフォーマンスに合わせて、
何ヶ月も前から体を絞ること、
そういう作り手の貴重な現場のことも
聞かせてくれた。
でも
真剣な話も馬鹿話もみんな酒の肴となって
言うことがありすぎて飲み過ぎた。
時々全然会わない期間もあったりしたけど
会うと何事もなかったように
また話の続きが始まり
会う度二人で怪気炎を上げていた。
二人で怪気炎を上げてたことの一つに
「本を出そう!」ということがあった。
私が絵本を出した時には
自宅に呼んでくれて、手作りのおいしいごはんでお祝いをしてくれた。
(そしてまた酔っぱらった。。)
おもむろに
ペンを渡され、
「サインして!」と言われて
生まれて初めてのサインをさせてもらった。
今度は私が真っ赤になって、ルビィさんをばしばしたたく番だった。
そして、ルビイさんの本「・(period)」が発売されて
会おう会おうと言っている間に
入院、治療の話があり
果たせなかった約束が残った。
彼女の出版のお祝いをする、ということと
本にサインをしてもらうこと。
先週一回忌の集まりがあって
彼女を通じて知り合った人たちに再会した。
その中のカメラマンのKさんから
彼女の写真を頂いた。
この時、
これしか私は彼女の写真を持っていないということに
気がついた。
そして、一週間が経って
もう会えないんだということに
本当の意味で気がついた
本当に本当に気がついてしまった。
ルビィさん、さみしいです。

顔写真 photo by カキモトジュンコ
『(.)period』